牧師のページ

ピレモンへの手紙が啓示していること

★ピレモンへの手紙の中に、パウロの行った依頼・願望の言葉があります。
①「わたしは、キリストにあってあなたのなすべき事を、きわめて率直に指示してもよいと思うが、むしろ、愛のゆえにお願いする。」
②「わたしは、あなたの承諾なしには何もしたくない。あなたが強制されて良い行いをするのではなく、自発的にすることを願っている。」
③「もしわたしをあなたの信仰の友と思ってくれるなら、わたし同様に彼を受けいれてほしい。」
「彼があなたに何か不都合なことをしたか、あるいは、何か負債があれば、それをわたしの借りにしておいてほしい。このパウロが手ずからしるす、わたしがそれを返済する。」
④「この際、あなたが、あなた自身をわたしに負うていることについては、何も言うまい。」
⑤「兄弟よ。わたしはあなたから、主にあって何か益を得たいものである。わたしの心を、主にあって力づけてもらいたい。」
⑥「わたしはあなたの従順を堅く信じて、この手紙を書く。あなたは、確かにわたしが言う以上のことをしてくれるだろう。」
★この言葉の中に、もし引っかかりを覚える言葉があったら、立ち止まって考えてみてください。キリスト者が主なる神様に応答するのは、主イエス・キリストにおいて与えられた恵みの故です。キリスト者が信仰的に応答する時、パウロが語ったこの構造がそのまま主なる神様と自分との間にあてはまります。

聖霊(御霊)の働きをパウロに聞く

★パウロが弟子のテトスに送った手紙の中に次の文章があります。
[03]わたしたちも以前には、無分別で、不従順な、迷っていた者であって、さまざまの情欲と快楽との奴隷になり、悪意とねたみとで日を過ごし、人に憎まれ、互に憎み合っていた。
[04]ところが、わたしたちの救主なる神の慈悲と博愛とが現れたとき、
[05]わたしたちの行った義のわざによってではなく、ただ神のあわれみによって、再生の洗いを受け、聖霊により新たにされて、わたしたちは救われたのである。
[06]この聖霊は、わたしたちの救主イエス・キリストをとおして、わたしたちの上に豊かに注がれた。
[07]これは、わたしたちが、キリストの恵みによって義とされ、永遠のいのちを望むことによって、御国をつぐ者となるためである。
[08]この言葉は確実である。わたしは、あなたがそれらのことを主張するのを願っているそれは、神を信じている者たちが、努めて良いわざを励むことを心がけるようになるためである。これは良いことであって、人々の益となる。
★パウロの語っていることの第一は、聖霊が、罪人を再生し、新たにするということです。第二に、聖霊が、キリスト者に永遠の命の希望を与え、神の国を継承する者とするということです。そして第三に、以上の二つのことを「確実だ」と知るキリスト者は、努めて良いわざを励むことを心がけるようになるということです。キリスト教信仰は、かならず信仰者に倫理的な応答を促すことがわかります。この応答行動が御霊の実と呼ばれることになります。

「小さい不都合な現実」と向き合う

★まずは、一般的な表現で書かせてもらいます。「私達にとって、自分が否定している現実に自分自身が向き合わなければならなくなった時、その現実を受け入れるのは、とても大変なことです。」★大きく当てはめれば、「死」という現実があります。日本人に限ったことではないのでしょうが、「死」に向き合うことを拒むかのように、健康指向を刺激する宣伝が日々行われています。しかし、自分の健康が完全に蝕まれ、回復への見込みが無くなった時、「死」という現実が否応なく登場してきます。死は当然の帰結であるということを理解しているとは言え、この現実と向き合うことは、本人にとって大変な苦痛となります。★このことは心理学的に「無意識の持つ力」として説明できます。無意識は自分が否定している現実を知っています。ですから、その現実を回避するように自分自身に働きかけます。ところが、人生とはある意味無情でありまして、自分自身が否定している現実を受け入れなければならない事態が起きて来ます。もちろん無意識は即座にその現実を理解します。そして、その現実を受け入れさせないように動くのです。この心の動きが「苦痛」の正体です。★このことから、心理学的には、自分にとって「小さい不都合な現実」を数多く体験することの重要さが認められています。つまり、物事が思い通りには進まないという小さな現実を多く通されることで、心理的な耐性が培われるというのです。思い通りにゆかない現実を乗り越える知恵は、小さな苦痛を乗り越えようとする時に培われるということです。★小さな課題との取り組みが、いつしか、大きな課題と取り組む力を養ってくれるのです。
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